猫は自分の体の大きさを分かっている?狭い穴の実験

この記事の要点
- 猫は穴の高さが低くなると通る前にためらいましたが、幅が狭くなってもためらいませんでした。
- この非対称性は、猫が体の高さについては内的な表象を使っている可能性を示します。
- 幅の判断には、ひげや体側の接触といった別の手掛かりが使われていると考えられます。
- 自分の体の見積もりは、身体を持つ動物の空間認知の基礎にあたる能力です。
自分の体がどれくらいの大きさかを知っていることは、当たり前のようでいて高度な能力です。ドアの幅を見て体を斜めにする、頭上の低い梁で身をかがめる。こうした判断には、体の大きさの内的なモデルが必要になります。
高さと幅で結果が分かれた
Pongrácz(2024)は、家庭猫30頭を自宅で調べました。板に開けた穴を通って飼い主のもとへ向かう課題で、穴のサイズを少しずつ小さくしていきます。条件は2つ。高さを一定にして幅を狭めていく条件と、幅を一定にして高さを低くしていく条件です。
結果は非対称でした。高さが体より低くなると、猫は通る前に立ち止まり、ためらう時間が伸びました。一方、幅が狭くなってもためらいはほとんど増えず、猫は通れるかどうかを試し続けました。
なぜ高さと幅で違うのか
著者の解釈はこうです。猫の体は幅方向に強く変形できます。鎖骨が他の骨と関節でつながらない浮遊骨であるため、肩幅を大きく縮められる。つまり幅の狭さは、実際に挑戦してみれば通れることが多い。だから止まる理由がありません。
高さは違います。背骨と胸郭の厚みは大きく変えられないため、低すぎる穴は物理的に通れません。ここでためらうということは、猫が体の高さについては事前に見積もっている――内的な身体表象を参照している――可能性を示します。
「見て判断」か「触って判断」か
幅の判断がためらいを生まないことは、猫が幅を全く見ていないという意味ではありません。ひげ(洞毛)は体幅の目安になる長さを持ち、隙間に入りながら触覚で確認できます。視覚で事前に決めるのではなく、進みながら判断する方式だと考えられます。
実験は自宅で行われたため、実験室特有の緊張が結果を歪める心配は小さくなっています。一方で30頭という規模と、家庭ごとの設置条件のばらつきは限界です。猫の空間認知の関連研究は猫は見えない物を追える?にもまとめています。
飼い主にとっての実務的な意味
幅に対して猫が挑戦寄りだという事実は、安全対策に直結します。家具の裏、洗濯機の脇、配管まわりの隙間は、猫が入り込んで抜けられなくなる事故の温床です。入れそうに見える隙間は塞ぐ、というのが原則になります。
また、キャリーやトンネル型の遊具を選ぶときは、幅より高さを基準にすると猫が抵抗しにくくなります。高さが足りない入口は、猫にとって明確な障害として認識されるためです。
身体の見積もりは知能の土台
自分の体のモデルを持つことは、道具使用や複雑な移動の前提になります。猫は道具使用の証拠に乏しい動物ですが、身体の大きさを踏まえた移動計画という基礎的な部分は備えていることになります(猫の問題解決能力)。
猫の認知研究の全体像は猫のIQは測れる?にまとめています。個々の実験が何を測ったのかまで戻って読むと、猫の知能像はぐっと具体的になります。
人の空間認知を測る
人間でも、空間の把握は知能検査の主要な柱の一つです。図形を頭の中で回転させたり、展開図から立体を組み立てたりする課題がこれにあたります(空間認識能力を鍛える)。ねこIQの無料IQテストは空間推理を含む4分野・20問を約10分で測定し、推定IQと上位%を表示します。結果は自己理解のための推定値です。
よくある質問
- 猫は自分の体の大きさを分かっていますか?
部分的に分かっていると考えられます。2024年の実験では、猫は穴の高さが体より低いとためらいましたが、幅が狭い場合はためらわずに挑戦しました。
- 猫が液体のようだと言われるのはなぜですか?
鎖骨が浮遊骨で肩幅を狭められるため、体の幅より狭く見える隙間でも通れるからです。実験でも、猫は幅の狭さには挑戦し続けました。
- 家の隙間で猫が危険になることはありますか?
あります。幅の判断は挑戦寄りのため、抜けられない隙間に入り込む事故が起こり得ます。家具の裏や配管まわりの隙間は塞いでおくのが安全です。
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編集・免責事項
本記事はねこIQ編集部が、動物認知・行動・獣医学に関する査読研究を参照して執筆・編集しています。研究で直接測定した結果と解釈を分け、対象数、課題との相性、参加意欲などの限界を可能な範囲で明示します。
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