猫は飼い主に冷たくした人を避ける?第三者評価の研究

この記事の要点
- 犬は飼い主の求めを断った人からの餌を避けることが先行研究で示されています。
- 同じ手続きを猫で行った研究では、猫は助けなかった人を避けませんでした。
- 結果は、猫が第三者間のやりとりから人を評価する証拠が得られなかったことを意味します。
- 猫は人の指さしや飼い主の情動は利用するため、社会的な情報を一切使わないわけではありません。
人は、自分と関係のない場面でも他人を評価します。誰かが困っている人を無視するのを見れば、その人への印象は下がる。この能力は人間以外の動物にもあるのでしょうか。
犬では避ける行動が出た
犬を対象にした先行研究では、次のような手続きが使われました。飼い主が透明な容器を開けようとして失敗し、隣に座る人に助けを求めます。助ける条件(Helper)では、その人が容器を開けるのを手伝います。断る条件(Non-Helper)では、顔を背けて手伝いません。もう一方の側には、何もしない中立の人が座っています。
その後、両方の人が犬に餌を差し出します。犬は、飼い主を助けなかった人からの餌を避けました。第三者間のやりとりから人を評価している、と解釈される結果です。
猫では同じ結果にならなかった
Chijiiwaほか(2021)は、まったく同じ手続きを家庭猫に適用しました。猫は飼い主が容器を開けられずに助けを求める場面を見た後、助けた人・断った人・中立の人から餌を差し出されます。
結果、猫はどちらの人からも同じように餌を受け取りました。断った人を避ける傾向は見られません。研究者は、猫が第三者間のやりとりにもとづいて人を評価する証拠は得られなかったと結論しています。
「猫は薄情」という話ではない
この結果を「猫は人間関係に無関心」と読むのは早計です。まず、猫が場面そのものを注視していたかどうかという問題があります。猫は実験環境で注意の維持が難しい動物です。
また、猫は他の場面では明確に社会的情報を使います。人の指さしから餌の場所を見つけ(猫は人の指さしを読む?)、飼い主の情動的な反応から未知の物体への行動を変え、飼い主の猫向けの話し方だけに反応します(猫なで声は届いている?)。
進化の背景から考える
第三者評価は、集団で協力する動物にとって価値が高い能力です。誰が協力的かを知っておけば、次に組む相手を選べます。犬は群れで協力する祖先を持ち、人との協働の中で選択されてきました。
猫の祖先であるリビアヤマネコは単独で狩りをする動物です。集団内の評判を追う必要は小さかったと考えられます。この違いが結果に表れている可能性があります(猫と犬はどっちが賢い?)。
飼い主にとっての実務的な意味
猫が第三者の行動を評価しないなら、猫との関係を作れるのは自分自身との直接のやりとりだけということになります。他人が猫にどう接したかより、あなたが猫にどう接してきたかが効きます。
具体的には、名前を良いことと結びつける、無理に抱かない、逃げ場を用意する、といった直接的な経験の積み重ねです(猫はしつけを覚える?)。猫の社会的認知の全体像は猫のIQは測れる?にまとめています。
人間の社会的判断
人間の第三者評価は乳児期から現れることが知られており、社会性の基盤とされます。一方、IQ検査が測るのはこうした社会的判断ではなく、抽象的な規則の発見です(EQとIQの違い)。ねこIQの無料IQテストは20問・約10分で非言語の4分野を測定します。結果は自己理解のための推定値であり、公式な知能検査の代わりではありません。
よくある質問
- 猫は飼い主に冷たくした人を嫌いますか?
実験では避ける行動は見られませんでした。飼い主の求めを断った人と、助けた人のどちらからも、猫は同じように餌を受け取りました。
- 犬との違いは何ですか?
同じ手続きで、犬は飼い主を助けなかった人からの餌を避けました。猫にはその傾向が見られず、第三者間のやりとりから人を評価する証拠は得られていません。
- 猫は人を見分けていないのですか?
見分けています。飼い主の声を他人の声から聞き分け、飼い主の猫向けの話し方だけに反応します。評価していないのは、自分が関与していない第三者同士のやりとりです。
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編集・免責事項
本記事はねこIQ編集部が、動物認知・行動・獣医学に関する査読研究を参照して執筆・編集しています。研究で直接測定した結果と解釈を分け、対象数、課題との相性、参加意欲などの限界を可能な範囲で明示します。
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