猫なで声は届いている?キャットダイレクテッドスピーチの研究

この記事の要点
- 猫は、自分に向けられた話し方と大人向けの話し方を聞き分けることが実験で示されました。
- この聞き分けが成立したのは飼い主の声のときだけで、見知らぬ人の声では区別が見られませんでした。
- 猫向けの話し方は、乳幼児に向ける話し方と共通する特徴(高い基本周波数、抑揚の大きさ)を持ちます。
- 結果は、猫と飼い主の関係が個別の学習によって作られていることを示唆します。
猫に話しかけるとき、多くの人は無意識に声が高くなり、抑揚が大きくなります。この話し方はキャットダイレクテッドスピーチ(猫向け発話)と呼ばれ、乳幼児に向ける話し方と共通する特徴を持ちます。猫はこれを聞き分けているのでしょうか。
16頭の猫で確かめた実験
de Mouzonほか(2022)は、16頭の家庭猫を対象に再生実験を行いました。用いたのは馴化・脱馴化法という手続きです。同じ種類の音声を繰り返し聞かせると猫の反応は弱まっていきます(馴化)。そこで別の種類の音声を混ぜたとき、反応が戻る(脱馴化)かを見ます。
この方法の利点は、猫に訓練を課さずに「違いを検出したか」を測れることです。訓練が必要な課題では、猫の参加意欲が結果を歪めてしまいます。
飼い主の声のときだけ区別した
結果は明快でした。飼い主が発した文であれば、猫は猫向けの話し方と大人向けの話し方を区別しました。ところが見知らぬ人が発した文では、この区別は見られませんでした。
つまり猫は「高くて優しい声一般」に反応しているのではありません。特定の相手の、特定の話し方を学習しているのです。研究者は、この結果が猫と人の関係の個別性を示すと述べています。
乳幼児向け発話との共通点
人が乳幼児に話しかけるとき、基本周波数が高くなり、抑揚が誇張され、発話が短くなります。これは注意を引き、感情を伝えるうえで有効だと考えられています。犬に向けた発話でも同様の特徴が知られています。
猫向け発話も同じ方向の特徴を持ちます。違いは、猫が反応するのが飼い主に限られる点です。犬は見知らぬ人の犬向け発話にも反応することが報告されており、この差は犬と猫の社会性の違いを反映している可能性があります(猫と犬はどっちが賢い?)。
名前・声・においとつながる話
猫が飼い主に対して特別な反応を示すことは、他の研究とも整合します。猫は飼い主の声を他人の声から聞き分け(Saito & Shinozuka(2013))、自分の名前をほかの語から識別します(Saitoほか(2019))。
これらを合わせると、猫が学んでいるのは「言葉」というより「この相手が出すこの音のパターン」だと考えられます(猫は人の言葉が分かる?)。
実際にどう話しかけるか
第一に、名前を短く呼ぶこと。長い呼びかけより、一定の音の形を繰り返すほうが学習されやすくなります。第二に、良いことの直前に呼ぶこと。名前が罰と結びつくと、呼んでも来なくなります。第三に、正面から見つめず、ゆっくりまばたきを添えること。
第四に、大声を避けること。猫の聴覚は人より高い周波数まで届き、大きな音は強いストレス源になります(猫のストレスと認知)。
人間の言語と知能
人間の知能検査には言語性の課題が含まれますが、母語や教育の影響を受けやすいという問題があります(文化的公平性テストとは)。ねこIQの無料IQテストは言語を使わない図形問題で構成され、20問・約10分で4分野を測定します。結果は自己理解のための推定値であり、公式な知能検査の代わりではありません。
よくある質問
- 猫に話しかける意味はありますか?
あります。実験では、猫が飼い主の猫向けの話し方と大人向けの話し方を聞き分け、猫向けの話し方に強く反応することが示されました。
- 他人が猫なで声で話しかけても効果はありますか?
同じ実験では、見知らぬ人の声の場合は猫向けの話し方と大人向けの話し方の区別が見られませんでした。声の主が誰かが重要だと考えられます。
- 猫は人の言葉の意味が分かりますか?
単語の意味を理解している証拠は限られています。ただし自分の名前をほかの語から識別することは示されており、繰り返し聞く音のパターンは学習されています。
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編集・免責事項
本記事はねこIQ編集部が、動物認知・行動・獣医学に関する査読研究を参照して執筆・編集しています。研究で直接測定した結果と解釈を分け、対象数、課題との相性、参加意欲などの限界を可能な範囲で明示します。
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