猫は音楽が分かる?猫用に作られた曲の実験

この記事の要点
- 人間向けのクラシック音楽に対して、猫はほとんど反応を示しませんでした。
- 猫の発声の周波数帯とテンポに合わせて作曲した音楽には、接近やすり寄りが観察されました。
- 動物病院での診察時に猫向け音楽を流すと、ストレス行動の評価が下がりました。
- 音楽の好みは種ごとのコミュニケーション音の特徴に依存すると考えられます。
音楽に猫が反応しない、と感じたことはないでしょうか。それは猫が音に鈍いからではありません。人の音楽が、猫の聴覚とコミュニケーションの設計から外れているためかもしれません。
猫のための作曲
Snowdonほか(2015)は、次の仮説から出発しました。ある種にとって音楽が意味を持つには、その種が自然なコミュニケーションで使う周波数帯とテンポに合っている必要がある、というものです。
そこで作曲家と協力し、人の声より約1オクターブ高い音域で、ゴロゴロ音や子猫が乳を吸うリズムに近いテンポの曲を作りました。この曲と、人間向けのクラシック曲を家庭猫に聞かせて反応を比較します。
結果、猫は人間向けの曲にほとんど反応しませんでした。一方、猫向けの曲には有意に速く反応し、スピーカーに近づき、頭や頬をこすりつける行動が観察されました。すり寄りは、猫が対象を好意的に扱うときの典型的な行動です。
若い猫と高齢猫でより強い反応
この研究では、若い猫と高齢の猫で反応が強い傾向も報告されました。中年期の猫は相対的に反応が控えめでした。理由は確定していませんが、加齢による聴覚や活動性の変化が関わる可能性があります(猫の加齢と認知)。
猫の可聴域は上限がおよそ64kHzに達し、人間(約20kHz)よりはるかに高い音まで聞こえます。ネズミの発する超音波を検出する必要があったためと考えられています。人間向けの音楽が猫の耳にどう届くかは、この差を踏まえて考える必要があります。
動物病院での応用
Hamptonほか(2020)は、この猫向け音楽を臨床場面で試しました。診察の前と最中に音楽を流し、猫のストレススコアと扱いにくさのスコアを比較したところ、猫向け音楽の条件でどちらも低くなりました。
ただし、白血球比から見た生理的ストレス指標には差が出ませんでした。行動が落ち着いて見えることと、体内のストレス反応が下がることは、必ずしも一致しないということです。研究の限界をそのまま伝えるのが誠実な読み方です。
家庭で試すなら
第一に、音量を上げないこと。猫の聴覚は高感度で、大音量は強いストレス源になります。第二に、低音の振動が強い曲を避けること。第三に、猫が離れられる逃げ道を確保しておくこと。音が嫌なら逃げられる、という選択肢が重要です。
第四に、通院や来客など緊張しやすい場面の前から流し始めること。慣れた音が場面に先行していると、環境変化の衝撃が和らぎます。猫のストレスと認知の関係は猫のストレスと認知にまとめています。
音の知覚と知能
音楽への反応は、その種の聴覚の設計とコミュニケーション様式を反映します。猫が人の音楽に無関心なのは知能の問題ではなく、周波数帯とリズムのミスマッチです。猫の感覚と認知の全体像は猫のIQは測れる?にまとめています。
人間の知能検査では、聴覚や言語の影響を避けるために図形課題が使われることがあります(文化に依存しないIQテスト)。ねこIQの無料IQテストも非言語の4分野・20問を約10分で測定し、推定IQと上位%を表示します。結果は自己理解のための推定値です。
よくある質問
- 猫は音楽が好きですか?
人間向けの音楽にはほとんど反応しません。猫の発声域とテンポに合わせて作られた曲には、スピーカーに近づいてすり寄る反応が観察されました。
- 猫にどんな音を聞かせればいいですか?
高めの周波数で、ゴロゴロ音や吸乳のリズムに近いテンポの音です。人間の音楽をかける場合は、大音量と低音の振動を避けるのが無難です。
- 動物病院で音楽は役に立ちますか?
はい。診察前と診察中に猫向け音楽を流した研究では、ストレス行動と扱いにくさの評価が下がりました。ただし血液指標には差が出ませんでした。
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編集・免責事項
本記事はねこIQ編集部が、動物認知・行動・獣医学に関する査読研究を参照して執筆・編集しています。研究で直接測定した結果と解釈を分け、対象数、課題との相性、参加意欲などの限界を可能な範囲で明示します。
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