猫は鏡の自分がわかる?自己認識テストの現在地
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この記事の要点
- 猫が鏡の自己認識テスト(マークテスト)に合格したという査読付きの報告はありません。
- マークテストは1970年にチンパンジーで確立された手法で、視覚に強く依存します。
- 犬ではにおいを使った自己認識テストが試みられ、自分のにおいの変化に長く注意を向けました。
- テストに合格しないことは自己の感覚が無いことの証明ではなく、課題が種の感覚に合っていない可能性を含みます。
鏡の前で毛を逆立てる猫、鏡の裏を覗きに行く猫、まったく無関心な猫。鏡に対する反応は個体差が大きく、飼い主の関心を集めるテーマです。研究の世界では、これは自己認識という大きな問いにつながっています。
ミラーテスト(マークテスト)の仕組み
Gallup(1970)は、チンパンジーに鏡を長期間見せたあと、麻酔中に本人からは見えない位置へ色素で印をつけました。目覚めたチンパンジーは鏡を見て、自分の体の印に触れました。鏡像を自分だと理解している証拠と解釈され、以降この手続きが標準になりました。
この手法に合格した例が報告されているのは、大型類人猿のほか、一部のイルカ、ゾウ、カササギなど限られた種です。猫が合格したという査読付きの報告はありません。
猫が鏡に示す典型的な反応
多くの猫は、初めて鏡を見たとき見知らぬ猫がいるかのように反応します。背中を丸める、鏡の裏を確認しに行く、といった行動です。しばらくすると反応は薄れ、鏡を無視するようになることが一般的です。
この「慣れて無視する」段階を、自分だと理解したからだと解釈することはできません。鏡像が自分の動きに完全に同期していても、匂いも音も伴わない対象として学習し、単に重要でないものとして分類しただけかもしれないからです。
視覚のテストが猫に合っているとは限らない
マークテストは視覚に強く依存します。しかし猫にとって、個体の識別に最も重要な情報は嗅覚と聴覚です。実際、猫は飼い主の声を聞き分け(Saito & Shinozuka(2013))、自分の名前を他の語から識別します(Saitoほか(2019))。視覚課題での不合格は、感覚のミスマッチを反映している可能性があります。
犬では、この問題意識から嗅覚版の自己認識テストが試みられました。Horowitz(2017)は、犬が自分のにおいに別のにおいを加えられた条件で、通常の自分のにおいより長く嗅ぐことを報告しています。猫について同様の確立された手続きはまだありません。
「合格しない=自己がない」ではない
動物の能力を判定するとき、テストに合格しないことは能力の不在の証明にはなりません。課題への動機づけ、感覚の適合、実験環境への慣れなど、成績を左右する要因は多数あります。猫が実験で成績を出しにくいことは繰り返し指摘されています(猫と犬はどっちが賢い?)。
人間の知能測定でも同じ論点があります。文化や言語の影響を減らすために非言語の課題を使う考え方は、動物実験での感覚の適合を考える発想と通じています(文化差の少ないIQテストとは)。
猫の認知研究の全体像は、猫のIQは測れる?猫の知能研究まとめに分野別でまとめています。
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よくある質問
- 猫は鏡に映るのが自分だと分かりますか?
分かっていると示した査読付きの研究はありません。多くの猫は最初に他の猫として反応し、やがて関心を失う様子が観察されます。
- ミラーテストとは何ですか?
本人に見えない位置に印をつけ、鏡を見たときにその印を自分の体で触るかどうかを調べる手法です。1970年にチンパンジーで確立されました。
- テストに合格しない動物は自己を認識していないのですか?
そう断定はできません。視覚より嗅覚を重視する種にとって、鏡という視覚課題は自己の感覚を測る適切な道具ではない可能性があります。
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編集・免責事項
本記事はねこIQ編集部が、動物認知・行動・獣医学に関する査読研究を参照して執筆・編集しています。研究で直接測定した結果と解釈を分け、対象数、課題との相性、参加意欲などの限界を可能な範囲で明示します。
本サイトのテストは娯楽・自己理解を目的とした推定値を提供するものであり、医療・臨床目的の検査や公式な心理検査(知能検査)ではありません。
